工場の動画は、「撮れないもの」を先に決めると進む
結論から書きます。工場や製造現場の動画は、見せたいものを並べる前に、撮れないものを決めてください。これが最初の作業です。
撮れないものは3種類あります。機密で社外に出せないもの、設備の内側にあって肉眼では見えないもの、ラインを止めないと撮れないもの。先にこの3つを抜くと、残ったカットだけで構成が組めます。
逆の順番で進めると、撮影の数日前に止まります。構成案に入れた加工のアップについて、品質保証の担当者から「この治具は外に出せない」と言われる。差し替えを考える時間は、もう残っていません。
私たちは広島で動画制作会社をやっています。2022年の設立以来、累計300本以上を制作してきました。お取引先の業種には製造業が入っていて、工程や技術の見せ方についての相談は多いほうです。
この記事では、撮影前に通す社内の4か所、実写と図解の線引き、稼働を止めない段取り、1回の撮影から出す本数、公開前の確認を書きます。
撮影より先に、社内の4か所へ話を通す
工場の動画で日程が動く原因は、制作側の都合ではありません。社内の確認です。声をかける先は4つあります。
- 製造の責任者。撮影を入れられる日と時間帯、立ち入れる範囲
- 安全衛生の担当者。保護具、立入りの制限、撮影スタッフへの事前説明の要否
- 品質保証や技術の担当者。映してよい設備と、映してはいけない治具・図面・表示
- 取引先。他社から預かった部品や金型が画面に入る場合の許可
4番目が抜けやすいです。自社の工場でも、並んでいる部品が他社の製品ということがあります。型番が読める状態で公開すると、後から取り下げになります。
この4か所に聞く質問は、1つにまとめられます。「この範囲を、この日のこの時間に撮って、Webで公開する。問題のある箇所はどこか」。範囲と公開先を同時に出すのがコツです。公開先を伝えないと、社内用の資料だと思われたまま話が通ります。
実写で撮るか、図解に回すかは3つの質問で決まる
工程を見せる方法は、実写・図解アニメーション・3DCGの3つです。好みで選ぶのではなく、下の3つの質問で振り分けます。
| 質問 | はい | いいえ |
|---|---|---|
| 肉眼で見えるか(炉の中、配管の内側、ミクロンの精度は見えない) | 実写 | 図解アニメか3DCG |
| 稼働を止めずに撮れるか | 実写 | 図解アニメか3DCG |
| その映像を社外に出せるか | 実写 | 図解アニメ |
3つすべてが「はい」なら実写で撮ります。1つでも「いいえ」があれば、その工程だけ図解に回します。1本の中で混ぜて構いません。
図解にすると、見せる度合いを調整できます。実際の設備の形を外し、原理だけを描けば、機密の線を越えません。株式会社シンコー様の企業紹介動画では、船舶用ポンプ・タービンの技術をアイソメトリックの図解アニメーションで解説しました。構成・絵コンテ・イラスト・アニメーション・編集を一括で担当し、4分58秒の1本にしています。
工程そのものを解説する形もあります。株式会社アルコム様では、ガスパージ工程を解説するアニメーションをシリーズで制作し、イラストとモーションを担当しました。製品の外側の動きや使用環境を見せるなら3DCGです。しろくま電力様のカーポートでは、雨や雪などの環境表現を含めた1分38秒の製品PVを3DCGで作っています。
費用の見え方も変わります。実写のスタータープランは50,000円(税別)で、一人体制の撮影と編集、修正2回が入ります。アニメーションは、絵コンテの提案から入るスタンダードプランが150,000円です。図解は描く枚数で金額が動きます。全工程をアニメにするのではなく、見えない1工程だけを回すほうが予算に収まります。
稼働を止めない段取り
「撮影のためにラインを止める」は、ほぼ通りません。止めれば生産計画に穴が開きます。止めずに撮るなら、段取りを撮影側に寄せます。
やることは4つです。
- 稼働表をもらい、同じ作業が繰り返される時間帯に撮影を入れる。同じ動きが何回も来るので、1回失敗しても次が撮れます
- 寄りのカットは、休憩や段取り替えの数分に集める。機械が静止していても、寄りの絵は成立します
- 三脚を置く位置を下見で決める。通路幅と動線を確認し、作業者が機材を避けて歩く状態を作らない
- 音を先に取りに行く。現場の音は、後から作れません
4番は、映像より効くことがあります。紙布プロジェクト様のインタビュー動画では、織物機の音を冒頭に取り入れ、手元や目線に寄った実写映像で構成しました。現場の音は、それだけで現場の空気を伝えます。
下見が必要なら、ロケハンが入るプランを選んでください。実写のプレミアムプラン250,000円には、ロケハンと2名体制の撮影が含まれます。稼働中の現場で2か所を同時に押さえるなら、この体制のほうが安全です。
1回の撮影から、何本出すか
工場に入れる日は、そう多くありません。1回の撮影で複数本の素材を撮ってしまうのが現実的です。
分け方の例を挙げます。
- 技術紹介(3〜5分)。商談と展示会で流す
- 採用向け(1〜2分)。働いている様子と、現場の社員の声
- 縦型(15〜30秒)。SNSと求人媒体
- 工程の解説(図解アニメ)。撮影素材は使わず、別で作る
大事なのは、撮影前に本数と用途を決めておくことです。本数が決まると、インタビューの質問も、撮る時間帯も変わります。社員インタビューを入れるなら、実写のスタンダードプラン100,000円にインタビューが含まれます。日本ガイシ様の社員インタビュー動画では、7分53秒の編集・テロップを担当しました。
納期は、最短2週間、撮影を伴う実写動画は3〜4週間が目安です。社内の承認に2週間かかるなら、その日数は手前に積んでおいてください。
公開前に見る、機密と権利の5項目
編集が終わったあと、公開の前にもう一度見ます。見るのは5つです。
- 図面・仕様書・作業指示書の文字が読めないか
- 治具・金型・ラインのレイアウトで、外に出さない取り決めのものが映っていないか
- 他社の製品やロゴ、型番が判別できないか
- 作業者の顔。本人の了解を取っているか
- 出願前の技術が映っていないか
5番は製造業の動画に特有です。特許庁の「発明の新規性喪失の例外規定」の案内では、自ら公開した発明でも、公開した日から1年以内の出願であることなどの要件を満たせば、例外の適用を受ける道が示されています。手続きは、出願と同時に適用を受ける旨の書面を出し、出願から30日以内に証明する書面を提出する形です(出典: 特許庁)。
ただ、救済の手続きを前提に動くのは順番が逆です。出願の予定がある技術なら、公開のタイミングを知財の担当者と先に合わせてください。動画は、納品してから公開日をずらせます。
1から4は、撮る前に片づけるほうが早いです。書類は裏返す、モニターは切る、他社の部品にはカバーをかける。あとから映像で消すと、1カットずつの作業になります。修正は2回までが料金に含まれ、3回目以降は別途ご相談となります。この2回は、構成や見せ方の調整に使ってください。
相談する
工場の動画は、何を撮るかが決まっていない段階でもご相談いただけます。伺うのは3つです。動画を誰に見せるか、工場の中にカメラを入れられるか、見せられない工程があるか。
この3つが分かれば、実写で撮る構成と、図解アニメーションに回す構成の両方で見積もりを出せます。カメラを入れられない場合も、図面や写真からアニメーションで作る形があります。
打ち合わせはオンラインで行います。広島市内なら訪問も承ります。全国対応していますので、県外の工場での撮影もご相談ください。ご相談は無料です。
